崩壊はきっと止まない

(※冒頭に暴力表現があります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭の中で、そいつに馬乗りになってその顔を殴る。殴って殴って、血だらけになった手でそいつの首を絞める。そいつの顔は血で赤くなって、首を絞められたことでも赤くなる。そうしてそいつは絶命する。おれは泣きながら立ち上がって、もう動かないそいつの頭を思い切り蹴り飛ばす。なされるがままのその体にまた憎悪が湧いて、もう一度蹴る。抵抗しない、叫び声さえ上げないその肉塊を前にして泣く。泣きながら、「おれの身体に呪いをかけやがって」と吐き捨てる。――そういう妄想を、もうずっとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生まれてこの方「小さくない身体」というのをやったことがない。昔からずっと背の順は一番前か、よくて三番目だった。だからなのか、実年齢よりも若く見られる。もう立派なアラサーだというのに、未だにレジカウンターで年齢確認をされることもある。いつまで経っても実年齢に見られないことへのコンプレックスがずっと燻っている。

 

この身体が嫌いだ。

 

身長は152㎝と平均を大きく下回り、その身体の割に乳房が大きいことは自覚している。身体のラインが出る服を着ると胸が強調されてしにたくなる。「女」の身体、「女体」である己の身体を否が応でも見せつけられる。そこから逃れることはできないことも、同時に。

いつからこの身体を呪うようになったのか、その「呪い」をかけられた瞬間を、はっきりと記憶している。

おれの身体が「合法ロリ」と指をさされたあの時、おれの身体が下世話な話の俎上に軽々しくあげられたあの時、おれの身体がそれまで知識として知っていたその単語と結び付けられた、あの時。あの時には、こんな風に呪いとなってつきまとうものになるだなんて微塵も考えていなかった。

「人間」として生きてきたつもりだった。「女」でもなく、「女体」でもなく、「人間」だと。例えスカートを履こうとも、化粧をしてロングヘアであったとしても、おれはおれという「人間」として、生きてきたつもりだった。それがあの瞬間から崩れ落ちていった。がらがら、がら……。崩壊は未だに止まない。崩壊が止むことはきっとないのだろうと確信している。おれは、もう、おれの身体を取り戻すことはできないような気もしている。

 

「のはるさんって過激派ですよね」と時々言われる。これまで受けた理不尽、侮辱に怒りをあらわにすると必ず言われる。からかうかのように「怖いよお」とも。その度に思う。みんなどうしているというのだろう。己が受けた理不尽、侮辱をどうやって自分の中で処理をしているというのか。おれは怒りを殺意にすることでしか処理ができない。でも、それも面白半分に流される。「合法ロリ」だから?

 

本気で怒っているのに「怒ってる姿も小動物みたいで可愛いね」と言われた時の絶望と屈辱がどれほどのものか、みんな本当に”分からない”というのか?